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サナギ(前篇) [青赤「喜」怒哀楽]

部屋の掃除をする。特にトイレは汚れてなくとも、改めてピカピカにする。深呼吸をしてから目を閉じ、静かに祈る。神棚のアマラオ・フィギュアは依然(部屋の隅に積み重なっている)段ボール箱の中で眠っているので、かわりに石川直宏のポスターに向かって掌を合わせる。出陣前のルーティンは変えない。

千歳烏山駅行きのバスに乗る。スタジアムまで自転車で行ける距離という条件で選んだ新居だが、今日はオトナの事情でチャリ通は許されない。京王線に乗ってから先は、寸分の違和感もないいつもの道程。目をつぶってでも味の素スタジアムへたどり着くことができる。春の到来を期待させる陽光の下、歩む。

いつの間にか共進倉庫の建物がなくなっていた。その対角線上には巨大な建造物が完成しつつあった。変わりゆく飛田給の景色、変貌を遂げたのは田邉草民の髪型だけではなかった。ハレの日、ハレの場。今年のホーム開幕戦をはいつもと違うスタンドから見守ることになった。オトナの事情というヤツである。

ジャケットを着て、お行儀よく座っての観戦。レプリカユニフォームは鞄の中。エンブレム・デザインのピンバッチでさりげなく自己主張をさせて頂く。前半は腰が浮くことすらない、低調な仕上がり。ピッチから流れくる風が、陽の当たらないスタンドの冷却を加速させる。芋焼酎のお湯割りが欲しくなった。

スタジアム内の誰もが、明らかな特徴として把握できる。永井謙佑が疾る。「走る」よりこちらのほうがしっくりくる。その速さは、届かないところまで届くという意味で革命的ですらある。永井がドリブルに転じるその一歩目、注視するとそれは自分で自分に出したパスであることがわかる。ワケ・ワカラン。

その永井に対し怒りを露わにした65分。大久保嘉人の足下を狙ったパスのベクトルは、彼の意に沿うものではなかった。いいぞ、もっとやれ。ピッチ内外における意識改革の牽引者たる役割期待。その怒りが空気を引き締め、脱皮の促進剤となる。クラブにとってはじめての「いかつい」存在。怒れ、ヨシト。



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