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Mission "Iniesta" Complete [続東京向日葵日記]

小学生の夏休みは忙しい。湖畔の空手合宿から帰宅した日の夜、翌朝からサマーキャンプが始まるその前夜、腰の重い息子をスタジアムへ連れていくにはクルマでの送迎サービスが必要だった。ハンドルを握る奥様に手を振ってメインゲートへ。試合開始30分前、依然長蛇の待機列。明らかに平時と異なる景色。

テディベアが当たる・当たらない以前の問題で、入場時にストラップを手に入れることすらできなかった。ゲートの先には額に貼られた透明の若葉マーク、チケット片手に周囲をきょろきょろしている老若男女。ようこそ味の素スタジアムへ(ついでにこれも言わなければ)ありがとうアンドレス・イニエスタ。

びっしりと埋まった対面のゴール裏スタンド。 日頃は見慣れぬ「緩衝地帯」がくっきりと浮かび上がっていた。過去に蓄積した経験から、スタンドの埋まり具合でおおよその観客数を言い当てることができるようになっていたが、そんな「東京野鳥の会」会員にとっても、さすがにこの日ばかりは難しかった。

44,801人。クラブ史上二番目の大入りとなったが、それまで二位だった2002年7月の磐田戦(45,925人)は僕にとって青赤キャリア二度目となる東京スタジアムだった。0-2というスコア以上の絶対的な力量差をジュビロに(高原直泰に)見せつけられた。あの日のスタンドも、とにかく暑かったことを思い出す。

どんな酷暑でも、どんな惨敗でも。何があってもこのクラブをサポートすると心に決めたのは、初観戦(前述磐田戦の一週前)で鮮烈な印象を植えつけられたからだ。戸田光洋のハットトリックを含む4-0の圧勝、爆発するゴール裏、沸騰するスタジアム。あの夜、得も言われぬ甘美な感情が僕の脳髄を貫いた。

スコアレスのまま試合時間が進むにつれ、ゲームの勝敗とは別の角度で焦燥感に駆られていた。チケットが完売しただけでは意味がない、あの空気を作り出さないかぎり、今宵の一見さんは再訪者になり得ない。『ゴールを!』スタンド上層部に空席が見え始めた90分、切実なる思いに潤いをもたらしたリンス。

今後に大きな影響を与えるであろう(と信じたい)営業スタッフ含めたクラブ全体の勝利だった。「リンスって誰?」で構わないのである。あの夜の僕も「髪が赤くないほうの戸田という選手」だった。ニアをぶち抜いたあの弾道、大観衆が立ち上がり大声を上げたあの瞬間、幾人のココロに刻まれただろうか。

そういえば戸田もリンスと同じく背番号13でな。帰路、喉が渇いた息子はそんな父の話を聞き流す。新たに与えたレプリカは大人サイズ。親離れしてもたまには一緒に観に行こうという願いを込めてのものだが、自身の名前が印字されたユニフォームが少し恥ずかしいと訴えるのが、10歳の少年の現在地である。





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