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不動心 [シゴトよりも東京]

メンバーリストから長谷川健太監督の強い意志が伝わってきた。水曜のカップ戦に「落とさず」臨み、青髪の永井謙佑が頭で奪い取った1点を守り抜いた。複数得点の機会を逸したとの見方もできようが、不安を煽る気流の変化が生じていた飛田給の地で、最低限得るべき勝利という結果を残せたことは大きい。

別離の一秒後から、去りし者への熱度は急落する。長友佑都のときも、武藤嘉紀のときもそうだった。ただしエネルギーが欠損するわけではなく、むしろ危機感や焦燥感といった増熱剤が添加され、青と赤の情念は反動的に燃え上がる。一万に遠く届かない観客数、そのぶん濃度の高い声援がピッチに注がれた。

同床異夢を繰り返す、美しくも儚き恋絵巻。舞台脇の傍観者かもしれないが、移籍も引退もなく、クラブとの永続的共生を許されし者の恍惚と矜持の二つ我にあり。久保建英との昨日よりも矢島輝一との明日。いずれ訪れる別れの時まで、無償の支援を心に誓おう。男たちが疑いなき忠誠心を示す限りにおいて。



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194(後篇) [シゴトよりも東京]

あと1センチで林彰洋に追いつくな。モニターの表示値にぼんやりそんなことを思う。世の事象をなんでもFC東京に重ねる癖は治ることがない(そもそも血圧の単位はセンチではない)。担架で救急車に搬入されたときは、ほんの一瞬ながら米国プロレス的世界を体感しているようで高揚した。気楽なものだ。

それでもさすがに様々な思いが過ぎる。東京復帰にあたり、脂の乗った中間管理職よろしく奮闘してやろうと決意を固めた直後、序盤から大きく躓くのかもしれない。万が一のことがあったら家族に申し訳ない。せめて息子の結婚式までは生きていたい。物凄く感動的なスピーチの草案は七割方できているのだ。

まもなく家族を迎える新居での日々。再びピッチへ舞い戻る石川直宏。息子の受験と海外留学。ピーター・ウタカの爆発的化学反応。新しいご近所さんとのバーベキュー。リーグ首位争奪戦で超満員の味スタ。奥様との老後悠々ハワイ生活。死ぬにはまだ早い。見届けなければならないものがあまりに多すぎる。

疲労とストレスと過度のアルコール摂取。聞き取りやすいマレー系英語で医師に告げられたのはこの三点だった。カイシャには前ふたつのみ伝えることとしながらも、中長期的に時間をかけて「アル中」になってしまったのだと悟る。たしかに飲まなくても済む酒まで飲んでいた(だって開幕二連勝だもんね)。

世の中には大きく分けて二種類の酒飲みがいる。ひとつは自分に何かをつけ加えるために酒を飲まなくてはならない人々であり、もうひとつは自分から何かを取り去るために酒をのまなくてはならない人々だ。(「ドライブ・マイ・カー」村上春樹)
しばらく青赤的喜怒哀楽を酒に重ねるのは自重しよう。反省。



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194(前篇) [シゴトよりも東京]

血圧計の測定バンドが二の腕を絞める感触で目覚める。左手の甲に点滴の針が刺さっていた。電子音をたてるモニターに目をやると、信じ難いほど高い値が表示されていた。会議室に駆けつけてくれたスタッフが即興で測ってくれた(としか思えなかった)数値が間違いではなかったのだと朦朧とした頭で悟る。

81階の会議室。台北やドバイでさらに高いビルを見たことはあったが、実際に中を昇ったなかでは、人生で最も高所に位置していた。ツインタワーというだけあって途中に(40階くらいだったか)互いの塔を往き来できる連絡橋があった。しかし帰りは直通のリフトで地上へ急行。連絡橋へは行けなかった。

噛み合うことない売主と買主の見解。出張に出る前から期待薄だったが、平行線が平行線であることを確認して長い打合せが終わる。日本の取引先から要請されていた「伝えるべきこと」は力強く強調したものの、スコアレスドロー。試合終了直前から周囲がぐるぐる回り始め、起き上がれなくなってしまった。

予兆はあった。年末年始に転勤が絡んで昨年12月以来、忘年会・新年会・送別会・歓迎会と、とにかく夜遅くまで多忙を極めた。日中に執務室で目眩(めまい)がすることも一度や二度ではなかった。気温差20度の異国で朝からジョギング、結果として目眩の特上クラスに高層ビルの遥か上層階で襲われた。

自力で身体を支えきれない。車椅子から担架へ、担架からまた別の担架へ。壊れたメリーゴーランドのように世界は回り続け、何故に担架を乗り継がねばならぬのかという単純な疑問すら呈する余裕もなかった。巨大なビルの正面玄関に到着した救急車、集まる衆目。なるほど「それ専用」の担架だったわけか。

大袈裟なサイレン音が気恥ずかしく、失神したふりをした。『パスポート含め荷物はこちらで預かりますから』という部下の声に虚勢を張ってピースで応える。パスポートの写真を見られてしまうのだろうか。2016年ACLモデルの青赤レプリカ(米本拓司)を着た笑顔の僕を見て、彼は何を思うのだろう。



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ヨシトと空を飛びたくて [シゴトよりも東京]

ポンというチャイム音とともにシートベルト着用のサインが消えた後、座席前のポケットから取り出したマニュアルを見ながらiPadの液晶を指でなぞる。クレジットカードの情報を入力してしばらく、新規メールの受信を確認した僕は人知れず笑みを浮かべた。夢の機内プロレス観戦、いけるかもしれない。

野球、バスケ、アメフト。米国のメジャースポーツファン(の一般的なサラリーマン)なら誰もが痛感する時差の壁がある。すなわち日曜に現地で開催される試合を、日本では月曜午前に観ることになるのだ。夜ふかし(または超早起き)さえすればどうにかなる欧州サッカーのそれとは根本的に条件が異なる。

例年1月末から2月頭にやたら肩幅の広い「体育会リーマン」たちによる午前半休が大量発生するのをみるにつけ、祝日法をもう少しカスタマイズして、スーパーボウルとレッスルマニアが開催される日曜の翌日は、旗日として確約してくれたらいいのにと思う(これも立派なBuy Americaだよね)。

米国のプロレス「WWE」をこよなく愛する僕もご多分にもれず、日曜の結果を知ることなくコソコソ帰宅して、月曜夜にゴニョゴニョするのを喜びとする週五勤務の労働者である。そんな畜生にとって月曜朝出発の出張は、鎖から解き放たれたまま花畑で乱舞する、そんな甘美な好機を予感させるものだった。

国際線の機内でWi-Fi接続サービスが始まったのは数年前のことだ。初期の無料キャンペーンの頃から、不良サラリーマンはこれを頑なに拒絶してきた。時間とメールに追われる日常からの避難所。スマートフォンの電源を切った瞬間、そこに広がる自由の世界。現代のオアシスを上空の彼方に求めていた。

閑話休題、相変わらず文章がくどい。冗長な作文を悪癖と恥じつつ簡単に整理すると、要はなんとか観られたよプロレスは。それに対してDAZNの(というよりJリーグの)体たらくたるや…というのがこの記事の主旨である。機内のネット接続はメールやLINEのやりとりは問題なく行えるレベルだった。

しかし大容量のデータ受信を求められる動画配信を楽しむには、さすがに力不足であった。航空会社のサービス案内にもやんわりと「さすがにそこまでは無理やで」と記されているので、そのこと自体にケチをつけるつもりはない。ドーンと始まったWWEのPPVイベントだったが、まもなく画面が凍結した。

予見されていたことだったので失意の度合いは小さい。それどころか音声だけは滔々と流れ続けるので、ラジオでビッグイベント序盤の煽りアナウンスに耳をすますような、不思議な楽しみ方ができた。16.80ドル、リスニング教材としてはお高いが、好奇心を満たすための実験費用としては有意義だった。

さすがは世界一のプロレス団体。World Wrestling Entertainmentの名に恥じぬサービスの提供だ。一定の満足感を得た僕は期待薄でDAZNのアイコンを指で押す。案の定、入口からシャッター・ガラガラ。版権ビジネスの難しさがあるのはわかるけど、まだ日本国の上空だよ?

映像も音声も楽しめない、翼の折れたDAZN。かくして大久保嘉人の新チャント「ヨシトが空を飛ぶ」を、実際に空飛びながら口ずさむという遠大なる野望は未遂に終わった。Jリーグ世界戦略、その道は険しい。森重真人がビシッと締める宣伝「FOR YOU」とは国内のファンに限定したものだったか。



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