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青赤「喜」怒哀楽 ブログトップ

合唱 [青赤「喜」怒哀楽]

前節・磐田戦のボレーが「動」なら、今節・札幌戦で決めたそれは「静」だった。勇まず、昂らず、自然体で振られた久保建英の左足。ネットが揺れるまでのテンポがコンマ半分早いと感じ、唖然とさせられた。控え目に徹した喜びの表現もまた、凄みに拍車をかける。抜き、斬る。居合の達人の佇まいだった。

まだ見ぬ世界とはこの先に待ち受けるのか、それとも既にそこへ足を踏み入れているのか。答えはわからないが、肩を組み一列に並ぶ選手たち(と、愛しいマスコット)と共に歌うYou’ll Never Walk Aloneは経験したことのない、感動的な光景だった。皆が、皆で変わろうとしている。


タグ:久保建英
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ルパン三世 東京見聞録 [青赤「喜」怒哀楽]

機を見るに敏。「後半開始専用」ルパン三世のテーマをオンエアリストの筆頭にシフトさせたゴール裏。亡き原作者への追悼曲で幕が開いた一戦は、東京が攻め続けながらも決め手を欠く展開に。狙い通りスコアレスのまま時計の針を進めていた松本山雅だったが、前半終了間際に怪盗の侵入を許すこととなる。

緑色の警備網を突破した男は、女たらしで三枚目、ナルシストの猿顔。しかし善人からは決して盗まないという「いい人の美意識」を持ち合わせていないことから、ルパン以外の誰かと推理したい。エンドチェンジで勝てないジンクスも払拭、どうやらコインの表裏いずれにも「WIN」が刻印されていたようだ。


タグ:永井謙佑
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手の届く幸せ [青赤「喜」怒哀楽]

競技に挑む者たちと、それを支援する者たちと。限りなく無駄を省いた方形の箱に収められた水曜夜、一万余の人々。ワールドカップ後のリーグ再開は、この上ない臨場感を堪能できる柏日立台の専用競技場から。小川諒也が右SBとしてプレーする不可思議な光景が、手を伸ばせば届きそうな先で展開された。

「飛車角」に加え、さらに数枚を落とした感のある布陣。それでも一手一手が誠実で、厳粛で、実直だった。『バチン』怖れず身体をぶつける際の震動が、気持ちを込めて指す駒が盤を叩く音に重なった。東慶悟はその技巧と献身を交互に見せつけ、高萩洋次郎はベンチへ退いた後もなお闘志を露わにしていた。

とりわけ精力的に盤上を動き回る駒があった。棋譜には米本拓司の名がびっしりと並ぶ。身体を投げ出し危険の芽を摘み取る、真骨頂といえる場面が幾度も見られた。心揺さぶられる一挙手一投足、うだる暑さを忘れさせてくれる熱さ。画面越しに眺める煌びやかなショーケースより、僕はこちらの方が好きだ。


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再燃の気配 [青赤「喜」怒哀楽]

試合中に味の素スタジアム内を「散歩」している間に東京が得点する、そんな局地的なジンクスが生まれていた。恵まれた環境が人を貪欲にするのであろうか、首位広島に2点のリードを奪っただけに飽き足らず、この日もさらなる快楽を貪らんと、我が身をふらりとゴール裏からバックスタンド方向へ移した。

ルーカス・コーナー。勝手にそう命名した49番柱付近で、平時より角度をつけて両軍の攻防を見守る。ディエゴ・オリヴェイラ(嗚呼、いったいどこまで素晴らしい外国人FWなのだろう)が強さと速さで奪った3点目、バーを叩いたボールが鋭角に弾き飛ばされた様子を真正面から視認した。ジンクス、健在。

扇状に広がるゴール裏の両端まで、そしてバックスタンドの中央部に至るまで、声援と手拍子の波が届いていた。勝利こそが最大のファンサービスであり、観客動員策。サポーター仲間の言葉を改めて噛み締める。平日夜のスタジアム、純度高い声援が心地好く、さらなる強さを伴って夜空へ拡散されていった。


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MIST [青赤「喜」怒哀楽]

スコアを同点とされた直後も、そこから発される「気」が減退することはなかった。久々に勝利という果実の味を思い出した支援者たちは、変わらず身体を揺らし、声援を送った。あるべき状況が戻ってきた、そう感じた。干からびて、ひび割れたゴール裏を、ウエットな感情が霧吹きされるように薄く包んだ。

そんな空気が伝播したか、ピッチでも明らかな変化が。ディエゴ・オリヴェイラが頭で放つ一撃。ピンボールのように勢いよく跳ね返ったボールが相手を突き放し、僕たちは失い続けた自信をまた少し取り戻した。しかし干天の慈雨は瞬く間に乾地へ吸われる。まだまだ渇いている、さらなる潤いを欲している。


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Phoenix [青赤「喜」怒哀楽]

寂しい客の入りだった水曜夜のスタジアムが、その瞬間から特別な意味を有する空間に様変わりした。右膝前十字靭帯断裂・内側靭帯損傷という、文字表記するのも痛々しい大怪我から復帰した男が、三度目の復活を遂げた。この日一番の拍手と声援で迎え入れられた背番号7が、涙で霞んでよく見えなかった。

両の膝の前十字靭帯に傷を負った事実が、この仕事を生業とする者にとってどれだけ重い十字架であるのか、想像すらつかない。彼はこれからも怪我の恐怖と闘い続けるのだろう。それはスタンドから見守る僕も同じだ。フクダ電子アリーナで目撃した光景を、これだけ時を重ねてもまだ忘れることはできない。

喜怒哀楽が濃密に溶け込んだ日々を重ね、いつの間にかその背中で生き様を語るまで大きな存在になった。やがてクラブのアイコンとなっているかもしれない(同じく幾度も失意の負傷を乗り越えてきたあの男のように)。走れ米本拓司、襲え米本拓司、奪え米本拓司。僕たちも共に走り、共に襲い、共に奪う。



タグ:米本拓司
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そして誰もいなくなった [青赤「喜」怒哀楽]

怒れる狙撃手、悩める救世主。脱いだユニフォームに対する不適切な行為、批判に晒された直後に迎える古巣との一戦。すべての視線がこの男に注がれ、すべての物語がこの男を中心に動いていた。数々の伏線が敷かれた後、互いに絡み合い混線したかと懸念されたが、実は一本の太い導火線に姿を変えていた。

ドラマのクライマックスは終演間際の数分間。千両役者は立派な舞台装置に満足せず、脚本・演出の細部にまでこだわる。導火線に火を点けたのは笑うアフリカン。長く伸ばした脚でワンツーのボールを返すさまは、マッチを擦る動作のように小気味よかった。着火2秒前、巨大な花火玉が彼の足下へ運ばれた。

爆発するスタンド、沸騰するスタジアム。少し遠慮気味に見栄を切ったこの夜の主役を、共演者たちが舞台の袖で十重二十重に取り囲む。それはまるで千秋楽のような大団円、気づけば舞台の上には誰ひとり残っていなかった。大久保嘉人を軸に描いた少し長めの序章、チャプター・ゼロはこうして幕を閉じた。

「This is awesome!」これぞ名場面、されど通過点。最高の結末を笑顔で堪能した人々も、ここまでが大河ドラマの予告篇に過ぎなかったと、やがて振り返ることになる。新たなキャスティングの舞台挨拶を終え、幕間をはさんで始まる新章・春の嵐。桜花咲く季節に物語は再び前進を始める。



タグ:大久保嘉人
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ウタカに乗った少年 [青赤「喜」怒哀楽]

あまり見ない少し洒落たカフェを過ぎると、あまり見ない少し洒落たハンバーガーショップがあった。プライベートでも滅多に来ることのない(来る理由のない)骨董通りを歩く。時間は水曜22時、状況としては接待会食後の二次会が終わったところ。お客さまと別れ、さあ内輪のメンバーでどうしようかと。

「眼球をわしづかみにされる」そんな喩えが思い浮かんだ。iPhoneの液晶画面にはあまり見ない少し洒落たスコアが映し出されていた。ゴメンちょっとクラっときたから帰るわ。まだ目眩(めまい)が治らないのかと心配する同僚に詫びて、銀座線の駅へ急いだ。そう、クラクラっときたのよ、「6」に。

渋谷で京王井の頭線へ乗り継ぎ、明大前で降りる。単身仮住まい、録画機器を持たない僕が深夜に転がり込めるのはココしかない。「LIVRE(リブリ)」のマスター(not DAZN but ZONO)さんには事前にメールでワガママを伝え、受諾頂いていた。全ゴール見たい、でも終電で帰りたい。

客がある程度はけた後でも、店内には熱気が残っていた。吉祥寺行きの終電時間を鑑み、前半ハイライトからディレイ放映を始めて頂いた。息つく間もなく好機が作られ(そりゃそうだハイライトだもの)阿部拓馬の先制ゴールが生まれる。拳を握り喝采を上げる、のは僕だけ。一人を除いてすでに満腹だった。

その男の登場からパーティーはさらに加速してゆく。PKを譲り受けた後の笑顔、仲間の得点を祝する笑顔。丸い顔がいっそう丸みを帯び、観てるこちらまで幸せにしてくれる。中島翔哉を背中にちょこんと乗せるシーンは、友情の大切さをテーマに制作された、子供向けムービーから切り出されたようだった。

大型補強の陰と陽。怒れる狙撃手とは対極に位置する、笑うアフリカン。ピーター・ウタカの口は聞かされていた以上に大きく、両脚は思っていた以上に細く長かった。その笑顔の渦は大久保嘉人をも飲み込み、想像もつかない化学反応を生み出すか。口の中を覗いてみたい。答えが書いてありそうな気がする。



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サナギ(後篇) [青赤「喜」怒哀楽]

赤黒のストライプ。ゴール裏でひと際目を引くハングルのロゴは間違いなく彼の支援者。肩にかかる長髪、女性的魅力すら感じさせるスラリと伸びた両脚。高萩洋次郎に惚れた以上、一途な愛を貫くほかない。この日はカシマと比べると空回り気味だったか。類似品なき天才肌、その流麗さの虜にさせてほしい。

巷の話題はどうしても前線の選手に偏りがちになるが、開幕二戦で最も勝利に貢献した選手は林彰洋だというのが私見である。物理的にはもちろん人間的にも本当に「大きい」という印象。ハイボールの処理に絶対的信頼を置いて観戦できる、そんなありそうでなかった喜びを大守護神・林が教えてくれている。

渇望感を全身で表現してくれる。中島翔哉の「ガツガツ」が無事に年を越してくれた。怒りつつも冷静なループを放つヨシトに大人の所作を感じた次の瞬間、青臭いまでの実直さをもってこぼれ球に食らいつく青年の主張をそこにみた。新しい背番号23を背負って、この先どのような成長を遂げるのだろうか。

左手、そして右手。いずれも己が手で球体を弾いた末の失点。塩田仁史の両の掌にはいまだに悔恨の感触が残っていることだろう。特に一失点目は厳しい批判に晒されてもおかしくないものであり、ポジション争いに負の影響を与えるのではないかと心配になるが、申し訳ない、こちらもそんな余裕はないのだ。

ちょうど暦の上では啓蟄(けいちつ)。土中に隠れ閉じこもった虫たちが這い出てくるという意の季語である。例年、立派な成虫に育つことを期待されながら、鳥たちに(または鹿や海豚といった害獣たちに)ついばまれてきた無力な蛹。はたして今年こそ脱皮に脱皮を重ねて、大きく美しい翼を広げられるか。

「今年こそは」「今年こそは違う」と思いを分かつ仲間たちと杯を交わしてきた。だが季節の移り変わりとともに、杯を満たす酒の種類も変わっていってしまった。『今年の「今年こそは違う」は違う』他所に気づかれたくない二連勝。脱皮を促進するのは蛹の本能、蛹の意思だけである。ただ信じて、見守る。


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サナギ(前篇) [青赤「喜」怒哀楽]

部屋の掃除をする。特にトイレは汚れてなくとも、改めてピカピカにする。深呼吸をしてから目を閉じ、静かに祈る。神棚のアマラオ・フィギュアは依然(部屋の隅に積み重なっている)段ボール箱の中で眠っているので、かわりに石川直宏のポスターに向かって掌を合わせる。出陣前のルーティンは変えない。

千歳烏山駅行きのバスに乗る。スタジアムまで自転車で行ける距離という条件で選んだ新居だが、今日はオトナの事情でチャリ通は許されない。京王線に乗ってから先は、寸分の違和感もないいつもの道程。目をつぶってでも味の素スタジアムへたどり着くことができる。春の到来を期待させる陽光の下、歩む。

いつの間にか共進倉庫の建物がなくなっていた。その対角線上には巨大な建造物が完成しつつあった。変わりゆく飛田給の景色、変貌を遂げたのは田邉草民の髪型だけではなかった。ハレの日、ハレの場。今年のホーム開幕戦をはいつもと違うスタンドから見守ることになった。オトナの事情というヤツである。

ジャケットを着て、お行儀よく座っての観戦。レプリカユニフォームは鞄の中。エンブレム・デザインのピンバッチでさりげなく自己主張をさせて頂く。前半は腰が浮くことすらない、低調な仕上がり。ピッチから流れくる風が、陽の当たらないスタンドの冷却を加速させる。芋焼酎のお湯割りが欲しくなった。

スタジアム内の誰もが、明らかな特徴として把握できる。永井謙佑が疾る。「走る」よりこちらのほうがしっくりくる。その速さは、届かないところまで届くという意味で革命的ですらある。永井がドリブルに転じるその一歩目、注視するとそれは自分で自分に出したパスであることがわかる。ワケ・ワカラン。

その永井に対し怒りを露わにした65分。大久保嘉人の足下を狙ったパスのベクトルは、彼の意に沿うものではなかった。いいぞ、もっとやれ。ピッチ内外における意識改革の牽引者たる役割期待。その怒りが空気を引き締め、脱皮の促進剤となる。クラブにとってはじめての「いかつい」存在。怒れ、ヨシト。



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