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attention [アウェイの地にて]

梅田の地下街には鈍重な空気が漂っていた。異例の「先行配信」となった容赦なき夏日が、鉛のような不快感に拍車をかけた。駅前第1ビルの薄ら汚れた迷路の先にあった串揚げ屋でレモン酎ハイをあおる。伊丹空港行のリムジンバスに間に合うよう、タイムマネージをするのが同伴者に課された唯一の仕事だ。

『本当にサッカーを観るためだけに大阪まで来られたんですね』すごいですと何度か繰り返した若者、4月に転勤するまでは直属の上司・部下という関係だった。新天地での生活がまだ試運転期間にあることは、御堂筋線を降りてから店までの所要時間に表れていた(確証はないが絶対に近道があったはずだ)。

週末のプライベート時間に炎天下のスタジアムへ呼び出され、青と赤のユニフォームとタオルマフラーの着用を要求される。初めて耳にするチャントを歌わされながら、ビールの売り子の動静も絶えずチェックさせられる。若者にはガスハラとでも呼ぶべき、新手のハラスメントと受け止められたかもしれない。

『彼女が伊丹ステイのときに会えますので』単身生活は寂しくないかという問いへの回答だった。文句なしの美女と好青年の組合せ。嫉妬されるべき人生を歩む若者は、謙遜と気配りの塊。意図して話題を散らしてくれるのがありがたい。サッカーよりもいつも笑顔の客室乗務員の話を聞くほうが、今は楽しい。


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