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狂想曲の舞台裏(前篇) [続東京向日葵日記]

「FC東京のサポーターの方ですか?」『どうしてそれがわかったのですか?』彼らとの会話はお約束のやり取りから始まった。遭遇した場所は味の素スタジアムメインゲート手前のペデストリアンデッキ、親子大小の身体を覆うはお揃いの青赤レプリカ。黄金週間にガス臭を漂わす恰好の取材対象なのだった。

遂に念願の「えふしーとーきょーだましい!」ができる(註)と浮き足立ったのはほんの数秒、取材スタッフ女史が着用するジャンパーやテレビカメラなどの機材に印字されるロゴから、彼らが明らかに異質なテレビ局の関係者であることが認識できた。(註) http://s.mxtv.jp/fctokyo/index2.php

「明らかに異質な」とは普段サッカーやJリーグに興味を示さないメディアや、Jリーグにあっさり見切りをつける一方で、年末になると空気の読めないお笑い芸人に派手な色のマフラーを巻かせて欧州サッカーの崇高さを説かせることを生業とするメディアを意味する。要するに場違いなお客さまなのである。

「今日の試合で期待する選手は誰ですか?」『それはもうピーター・ウタカ選手です』マイクを向けられたので、ビシッと即答。ところがカメラ目線で鮮やかに決まったと悦に入る僕をよそに、どことなく澱んだ空気が漂う。ゴールもアシストも決める大型補強最後の切り札、ウタカさんという回答に何故沈黙?

インタビュアーはそれ以上話を掘り下げることなく、マイクを下方にスライドさせた。今度は同じ質問を息子にパスするが、息子は息子で彼らの期待を大きく裏切り、すぐにパスを返すことなくリフティングを開始した。即ち、質問の意図を適切に汲み取ることなく緊張感も相まって滔々と語り続けたのである。

『ルヴァン杯の戦いでは前の試合で負けていて、チームとしても今日の試合は絶対に連敗できないので大事な試合ですし、決勝トーナメントに出るには勝たないといけないです。そして今日は相手がサンフレッチェ広島ではないのでピーター・ウタカ選手も試合に出ることができるので勝ってくれると思います』

父親の発言をしっかり拾い自身のコメントにウタカさんを織り交ぜるあたり、そんじょそこらの小学三年生とはレヴェルが違う。「すごいねサッカー詳しいんだね」に対し『うん「やべっちFC」毎週見てるから』と答えそうになったのはご愛嬌である。カメラは回り続け、インタビュアーの表情はさらに曇る。



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