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Phoenix [青赤「喜」怒哀楽]

寂しい客の入りだった水曜夜のスタジアムが、その瞬間から特別な意味を有する空間に様変わりした。右膝前十字靭帯断裂・内側靭帯損傷という、文字表記するのも痛々しい大怪我から復帰した男が、三度目の復活を遂げた。この日一番の拍手と声援で迎え入れられた背番号7が、涙で霞んでよく見えなかった。

両の膝の前十字靭帯に傷を負った事実が、この仕事を生業とする者にとってどれだけ重い十字架であるのか、想像すらつかない。彼はこれからも怪我の恐怖と闘い続けるのだろう。それはスタンドから見守る僕も同じだ。フクダ電子アリーナで目撃した光景を、これだけ時を重ねてもまだ忘れることはできない。

喜怒哀楽が濃密に溶け込んだ日々を重ね、いつの間にかその背中で生き様を語るまで大きな存在になった。やがてクラブのアイコンとなっているかもしれない(同じく幾度も失意の負傷を乗り越えてきたあの男のように)。走れ米本拓司、襲え米本拓司、奪え米本拓司。僕たちも共に走り、共に襲い、共に奪う。



タグ:米本拓司
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